RTX 3090でマイニングを実測した結果:30.58円/kWhでは「掘らない」が最適
RTX 3090でOctopusを230W・280W・350W・420Wに設定して実測。ハッシュレート、電力、実収益を突き合わせ、採算サイトとのズレと撤退判断を整理します。
結論: 350Wが「機材の最適点」、停止が「採算の最適解」だった
RTX 3090でOctopusを掘り、電力上限を230W・280W・350W・420Wに変えて測定しました。結果は明快です。
マイニングの構成としては350Wが最も効率的でした。しかし、電気料金30.58円/kWhで計算すると、350Wでも限界ベースで月約4,000円の赤字です。 したがって、今回の条件における採算上の最適解は「設定を工夫して掘り続けること」ではなく「掘らないこと」でした。
1. 何を測ったか
対象は、Ryzen 9 5950Xを搭載したPCのRTX 3090 24GBです。GPUの電力上限を変えながら、GPUテレメトリCSVとマイナーの出力を記録しました。電力上限の既定値は420W、最大値は450Wです。
電気料金は、時間帯別の安価な枠や段階制を持たないフラットな単価として、30.58円/kWhを使いました。このため、マイニングを追加したときの限界電気代も30.58円/kWhです。
壁コンセントの電力計は用意できなかったため、壁電力は次のモデルで推定しています。
壁電力 ≒ (GPU実測電力 + システム推定85W) ÷ PSU効率0.90絶対額にはおよそ±15%の誤差が残ります。一方、同じPC・同じ電気料金で電力上限を比較するため、設定間の相対比較は絶対額より信頼できます。
2. 電力スイープの実測結果
各CSVのGPU電力・温度と、同じ条件で記録したマイナー出力を突き合わせました。収益はプールの推定ウィジェットではなく、当日のNiceHashダッシュボードに表示された実績を基準にしています。
| 電力上限 | 実測ハッシュレート | GPU電力 | 収益/日 | 限界コスト/日 | 限界収支/月 |
|---|---|---|---|---|---|
| 230W | 31.39MH/s | 229.5W | 約40円 | 約163円 | ▲3,683円 |
| 280W | 33.00MH/s | 278.0W | 約42円 | 約202円 | ▲4,808円 |
| 350W | 93.52MH/s | 339.4W | 約119円 | 約252円 | ▲4,002円 |
| 420W | 90.61MH/s | 382.3W | 約115円 | 約287円 | ▲5,172円 |
230Wと280Wでは、電力を絞った分だけ消費電力は下がりましたが、ハッシュレートが大きく崩れました。350Wでは93.52MH/sまで戻り、420Wの90.61MH/sをわずかに上回りました。
ただし、350Wでも収益は1日約119円、限界電気代は約252円です。最も効率がよい設定でも、収益が電気代に届きません。
3. なぜ350Wが最適だったのか
350Wと420Wの効率を比較すると、次のようになります。
| 設定 | ハッシュレート | GPU電力 | 効率 |
|---|---|---|---|
| 350W | 93.52MH/s | 339.4W | 0.276MH/W |
| 420W | 90.61MH/s | 382.3W | 0.237MH/W |
350Wは420WよりGPU電力を約43W抑えながら、測定上のハッシュレートは約3%高くなりました。420Wにすれば必ず速くなるわけではありません。
一方、280W以下では、メモリクロックが維持されていてもコアクロックが大きく揺れ、ハッシュレートが30MH/s台まで落ちました。今回のOctopus実装では、メモリを回しているだけでは足りず、コア側の余力が必要だったと考えられます。
ここから得られるのは、電力上限の最適化と採算性は別の問題だということです。効率を17%改善しても、収益と電気代の差が大きければ赤字は消えません。
4. 採算サイトと実測が合わなかった
同じ日に複数の計算サイトを確認すると、CFXの予測収益は1日0.44〜1.68ドル、PRLは0.86〜4.40ドルでした。ソースによって、同じGPU・同じアルゴリズムの見積もりが数倍変わっています。
Octopusについて、minerstatの表示は114MH/s・379W・1日1.68ドルでした。しかし今回の実測は次のとおりです。
| 指標 | minerstatの表示 | 今回の実測 |
|---|---|---|
| ハッシュレート | 114MH/s | 90.6MH/s |
| 収益 | 約1.68ドル/日 | 約115円/日(約0.77ドル) |
| 電気料金30.58円/kWh | 黒字想定 | 限界ベースで約172円/日の赤字 |
ハッシュレートは約20%下振れし、収益は半分以下になりました。計算サイトは候補を絞るには便利ですが、実際のドライバー、温度、プールの支払いレート、停止時間までは再現しません。
5. 実験で詰まったところ
ベンチマークモードだけでは測れなかった
当初はウォレットを使わず、マイナーのベンチマークモードだけでハッシュレートを測る予定でした。しかし、lolMiner 1.98aのOctopusベンチマークはDAG生成後にコード0で終了し、速度が-nanや0.00MH/sになる状態を2回再現しました。SRBMinerには同じ用途のベンチマークモードがありません。
結局、実測にはプール接続が必要でした。これは「ウォレットを使わずに完全な実測をする」という当初の設計が成立しなかったということです。記事やレビューでベンチマーク値だけを比較するときは、実プール接続時の値と同じ意味なのかを確認する必要があります。
IPv6で接続できない問題
NiceHashのOctopus用ホスト名はIPv6アドレスも返しましたが、今回のネットワークではIPv6のstratumポートがタイムアウトしました。IPv4では即時接続できました。
最終的には実行時にAレコードを解決し、IPv4リテラルをマイナーへ渡す構成にしました。接続リトライが続く場合、マイナーやプールの設定だけでなく、DNSが返すIPv6経路も切り分ける必要があります。
温度監視に盲点が残った
RTX 3090では、nvidia-smiからGDDR6Xのメモリ温度を取得できず、temperature.memoryがN/Aになりました。コア温度は420W測定で平均69.2℃、最高72℃でしたが、メモリジャンクション温度は別のセンサーが必要です。
これは単なる表示上の不便ではありません。Octopusのようにメモリを強く使う処理では、最も重要な温度が読めないまま長時間運転することになります。VRAM温度を監視できない状態では、24時間運転へ移行しないと判断しました。
また、マイナーバイナリがセキュリティソフトにPUA判定される場面もありました。実験用の除外設定を使う場合でも、対象フォルダを限定し、取得元・ハッシュ・署名を確認し、実験終了後に解除する必要があります。常用環境の保護機能を無効化することは勧めません。
6. この実測から購入前に確認すべきこと
今回の実験を、別のGPUや別のコインにそのまま当てはめることはできません。ただし、手順としては再利用できます。
- 電気料金を、基本料金・燃料費調整・再エネ賦課金まで含めて確定した
- 壁コンセントの実測電力を測れるようにした
- 収益は予測値ではなく、実際に残高へ反映された値で計算した
- 電力上限を少なくとも3点以上で比較した
- コア温度とVRAM温度の両方を監視できる
- マイナーバイナリの取得元・ハッシュ・署名を記録した
- 税務、撤退、機器の売却・転用まで決めた
すでにPCを別用途で常時稼働させている場合は、PC全体の電気代ではなく、アイドル時との差分で限界コストを見ることもできます。ただし、今回のように限界ベースでも赤字なら、電力上限の細かな調整だけで逆転させるのは難しいでしょう。
AI用GPUの購入判断でも、同じ考え方が使えます。ローカルLLM向けRTX GPU 2026ガイド で扱うVRAMや実効速度に、消費電力・冷却・保守費を加えて見る必要があります。AI計算資源全体の電力制約については、AI計算資源レース2026の実像 も参照してください。
まとめ
今回のRTX 3090実測で分かったことは、次の3点です。
- Octopusの機材上の最適点は350W。420Wより高いハッシュレートを、少ないGPU電力で得られた。
- 採算サイトの予測は、そのまま自宅環境の答えにならない。実測ハッシュレートは約20%低く、収益レートも大きく違った。
- 30.58円/kWhでは、最適化しても赤字。今回の条件では、採算上の最適解はマイニングを停止することだった。
マイニングで重要なのは、最高ハッシュレートを出すことではありません。自分の電気料金、実際の消費電力、実際の着金額、温度監視の可否を同じ表に並べ、続ける理由があるかを判断することです。今回の実験は、利益を見つけるためというより、「掘らない」という判断を数字で確定するための測定になりました。
出典
- NVIDIA: NVIDIA System Management Interface — Official Documentation
- NiceHash: NiceHash Miner with support for Octopus
- lolMiner: 1.98a release
- SRBMiner: SRBMiner-MULTI 3.4.8 release
- 実測ログ: 2026-08-05取得のGPUテレメトリCSV、マイナーログ、収益記録(個別のアドレス・請求書番号は非掲載)
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仕様・料金・提供範囲が変わりやすいテーマは、公開日・更新日・情報確認日を分けて管理します。 導入前には必ず記事末尾の一次情報と公式ドキュメントで最新状況を確認してください。
2026-08-05にローカルのGPUテレメトリCSV、マイナーログ、実際のダッシュボード収益を突合。ウォレットアドレスなどの個別情報は公開対象から除外しています。
一次情報・参考リンク
- NVIDIA System Management Interface — Official Documentation https://docs.nvidia.com/deploy/nvidia-smi/index.html
- NiceHash Miner with support for Octopus https://www.nicehash.com/blog/post/nicehash-miner-3-0-5-4-with-support-for-octopus
- lolMiner 1.98a release https://github.com/Lolliedieb/lolMiner/releases/tag/1.98a 公開
- SRBMiner-MULTI 3.4.8 release https://github.com/doktor83/SRBMiner-Multi/releases/tag/3.4.8 公開